社会人門下生の体験記

 愛知県内には、尾張藩に由来する古武術も残っています。護身術・健康法あるいは習い事として、今もそうした古流は学ばれています。古武道に興味を持つ方は、まずそちらに興味を持たれるかもしれません。そうした古流武術ではなく、相生道(そうせいどう)という新武道を学ぶことには、どういったメリットがあるでしょうか?

 相生道は、古伝の伝統を残しつつも、奥伝の技を初心者にも開放し、分かりやすく再構築しています。そのため、短期間で様々な術技を学ぶことができます。

 道場の雰囲気については、実際に稽古している人に語ってもらうのが一番でしょう。

 そこで、山王道場で学んでいる社会人、K・O拳士に寄稿して貰いました。


K.O.拳士(社会人道場生)の体験記

山王道場で稽古をする利点

 相生道とは何か、ということに関しては他の記事に書いてありますので、ここでは相生道の道場稽古について、主に紹介したいと思います。

 もちろん、愛知県内であれば南山大学に部活動としての相生道部があります。相生道部に入部するという方法も相生道を始める手段の一つではありますが、あえて山王道場で稽古する理由にどのような点が挙げられるのでしょうか。

 まず特筆すべきは、なんといっても部活特有の付き合いというものが少ないことでしょうか(笑)この文章を見てくれている人の中には、大人数の仲間でワイワイやるのが苦手という方もいるでしょう。これを書いている私も、そのような付き合いが苦手な部類なのです。

  「しっかり相生道の稽古はやりたい、けれども自分の時間も最大限活用したいなぁ…」などと思う方もいるのではないでしょうか? そのような方には、山王道場での稽古をお勧めしたいと思います。

 稽古の少し前に各自で集合し、稽古が終われば各自で帰路につきます。もちろん、「飲みに行こう、ご飯を食べに行こ う」という誘いが皆無であるとは言いません。けれども、現時点でこの道場で稽古している人のほとんどは社会人です。無理な誘いは決してありません(そうは言っても、稽古に来る全員が仲が良いため、皆で食事に行っても楽しいことは間違いありません!!)。皆、明日の予定がありますからね。

 もちろん、これは相生道の本質的な部分とは何も関係がない話なのですが、結構重要な部分なのではないでしょうか(笑)
 そんな話はさておき、山王道場で稽古を行う魅力は何といっても少人数であることです。個別指導の学習塾のような指導を受けることは正直に言って厳しいのですが、それでも部活に比べて、個人の術技に関して重点的に指導を受けることが可能です。


稽古内容の紹介

 ここで、現在行っている稽古の模様をちょっとだけ紹介したいと思います。

 まずは準備運動やストレッチを行い身体をほぐします。その後、基本の稽古(突きや蹴り、または受け身などの稽古)を行います。これは剣道などの素振りと同じようなもので、基本的な動作を数多く行うことにより、それを身体に定着させます。

 次は基本的な攻防の練習です。ここでは様々な投げ技や突きや蹴りを用いて、相手と相対して稽古を行います。そして最後に、今日習った技の組み合わせを用いつつ、自分で考えた技の組み合わせを取り入れた稽古を行います。

 

 ここに挙げた稽古の最中のいつでも、指導者からアドバイスをもらうことができ、同時に質問することができます。少人数で稽古を行っているため、自分を見てもらえる時間が長いことが特徴です。

 もちろん多くの先輩からもアドバイスをもらえるので、有意義な稽古になることは間違いありません。


相生道から得られるもの

 さて、このような相生道に私が魅かれる点はどのようなものでしょうか? 袴をはくことができる。武器術を習うこと(一般的に目にすることが少ない、様々な武器に触れることが可能です)ができる。突きや蹴り、そして投げ技や関節技のようなものを全般的に習うことができる。
 これら全て、非常に魅力的な点であることは確かです。けれどももう少し抽象的な点を挙げるとすれば、「強くなること」ではないかと思っています。
 相生道は武道である以上、「強くなること」は大きな目標のうちの一つです。肉体的に強くなることは非常に魅力的であり、日ごとに新しい技を覚え、その技を稽古中に使うことは、まさに「強くなること」でしょう。
 そうは言っても、この時代に路上で喧嘩をして、そこで自分の強さを示すというわけにはいきません。過去の武道家の武勇伝としてしばしば耳にするようなことは、時代的にナンセンスです。
 なので、もう少し別の角度から考えてみたいと思います。

 そこで思い起こされること、それは自分の限界にまで挑戦するということによって得られる「強さ」ではないでしょうか。

 もし今までの人生で運動部系の部活 に所属したことがある方々なら「あぁ、そうだ」と納得できることだと思いますが、自分の限界にまで挑戦することはとても辛いことです。

 身体が疲れすぎてふ らふらになり、呼吸をするのもしんどくなり、立っていることすら嫌になります。それでも稽古を続けることができるというのは、これもまた「強さ」だと思い ませんか?

 これは別に、精神的に強くなっているだけではありません。

 ここからはとりわけ個人的な意見なのですが、このような極限までに疲れた状態の中で繰 り出される力強い技というのは、おそらく、自分の身体に一番負荷のかからない技ではないでしょうか。身体が疲れすぎて無駄な力が入らない以上、普段のクセ や力みがとれ、きれいな技が繰り出せるはずです。

 つまり、限界の状態で繰り出される力強い突きや蹴りは、様々な意味を含んだ「強い」突きや蹴りではないで しょうか。これはつまり、自分の中で「強さ」を試せる絶好の機会とも捉えることができるのです。

 ……このように書いておいて今更なのですが、稽古で限界まで挑戦しても、技がすぐさま上達するとは限りません。それは受験勉強然り、様々なスポーツ然りです。しかし、技の上達具合などが伸び悩んでも、稽古中のきつい練習はどこか別の分野で役に立ちます。これは間違いありません。
 またまた個人的な話なのですが、私はバイクに乗っていて雨の下り坂でこけたことがあります。スピードも結構出ていました。こけた後に自分の身体の傷の具合を調べてみると、確かにすりむいた痕や身体を打った痕は残っていました。路上を何メートルも転がっているのだから当然ですよね。でも、ヘルメットと身体の中心部分には傷一つありませんでした。受身の基本は身体の重要な部分を守ること、例えば頭を打たないことです。なので、きっとこれは受身を死ぬほどやったおかげだと、数年経った今でも信じています(まぁ、あくまで信じているだけなので、実際は違うかもしれませんが…)。


 それからもう一つ、体力がつきます(笑)まだ二十歳前の人は体力が有り余っていることでしょう。しかし脅かすようで申し訳ないのですが、今後、年々体力が落ちていく恐怖との戦いになることは明らかです。週二回のペースで道場において密度の濃い稽古をして、一年中汗を流す。まさに健康以外の何ものでもないです。

気軽に見学・体験へ来てください!

 ざっと、私が思ったことを書き連ねてきたわけですが、相生道のことをちょっとぐらい理解できたでしょうか。おそらく、ピンボケしていても被写体が何かぐらいは判別できる程度の写真には仕上がったでしょう(自画自賛…なのか?)。


 そこで、ここまで読んでくれた皆さんに個人的にお勧めするのは、体験に来ることです。初めは皆、初心者です。むしろ大学生になってから相生道を始める人がほとんどなので、当然のように皆が初心者なのです。そこの点は心配しないでください。

 そして一回体験に来て、自分には合わないと思ったら二度と来なければいいだけのこと。ここの人たちとはもう二度と会うことがないと思えば気が楽になって体験に来られるのでは?

 でも、「自分に合う」と感じたらそれは一生モノです。現に私も大学を卒業してから何年も経ちますが、飽きたとは全く思いません。私より先輩の社会人の方で、仕事の合間を縫って毎週のように稽古に参加している人がいるという事が、何よりの証拠だと思います。


  あと、冒頭で道場の関係性について書きましたが、もちろん南山大学(東京であれば多摩美術大学)との交流も可能です。むしろ、夏・冬合宿は合同です。数日間合宿所に泊まりこみ、共同生活を送るのも楽しいですよ。また、一つの大学内で友人を作るのも大切ですが、様々な大学、幅広い年齢の方と一緒に稽古する仲 間となり、汗を流すのも悪くないものです。

 

 これを読んでくれた方々と、道場で一緒に稽古ができる日を楽しみにしています。


(2015.03.27. 山王道場所属 K.O.)